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18禁BLゲーム「鬼畜眼鏡」に溺れる管理人の萌えやSSで構成されたブログです。  ※18歳未満(高校生含む)はお引き取りください。  リンクフリーです。(詳しくは「はじめに」をご覧下さい。)

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【一周年記念】みどかつSS「自鳴琴」①

こんにちは。管理人の明智です。


2009/4/5を持ちまして、当ブログは一周年を迎えました。
月並みですが、ここまで続けることが出来たのは皆様のお陰です。

遅くなりましたが、お礼として記念SSを書きました。
尚、大変申し訳ありませんが、FDのみどかつBESTEND後の設定ですので、Rをプレイしておられない方にはわかりにくいかもしれません。ネタバレを多分に含みます。


それでは、感謝の気持ちを込めて。
続きからどうぞ。




今年の春先に起こった事件で、佐伯克哉は死に掛けた。

克哉の恋人に向かって猛スピードで迫る車の前に飛び出し、撥ねられたのだ。幸いマンションのエントランスの段差のおかげでまともに衝突することがなかったため、重体にはならず一晩で意識は戻ったが、一歩間違えれば死んでいた。

克哉の恋人は無傷だったが、自分の所為で克哉を危険な目に遭わせてしまったことを酷く悔やんでいた。
けれど克哉は何回同じような状況になったとしても、毎回同じことをしてしまう自分が容易く想像できた。
何度でも、恋人を守るためにこの身を危険に晒すことを厭わないだろう。

どうしたって、あれ程愛しい恋人を失えないのだ。
克哉は甘さの滲む諦めの気持ちで笑う。

あの人は、憧れの対象で、畏敬の念を抱いていて、優しくしてあげたいとも思う、愛しい愛しい恋人なのだ。

そして今日、克哉は件の恋人である御堂孝典のマンションに、本格的に引っ越すことになった。

今までも生活は御堂のマンションで送っていたのだが、大学生の頃から借りていたアパートはそのままにして居た。それを引き払い、完全に御堂の家で暮らすことにしたのだ。

日本の同性同士の関係においては、究極に近い形だ。少なくとも二人は養子縁組という名の元で籍を入れることを考えて居ないので、互いにとっては最上の関係と言えるかもしれない。

同じ家で同じ時を過ごして生きる。

それは言葉にすれば単純な響きだが、そこに含まれる意味は果てしなく広い。平坦に言ってしまえば喧嘩したときに気詰まりになることだってあるし、完全な個の空間が少なくなるのだ。

克哉はそれらが恐かった。
自分の悪い部分を彼に見られ落胆されたり、知らないうちに苛々させてしまうことが全くないわけがない。
彼に嫌われたくはなかった。

けれどそんな不安と同じくらい、否、それ以上に、克哉は御堂と共に居たいと思った。
離れては居られないのだと悟ったのだった。

幸いなことに御堂の方は始めから同棲について積極的過ぎるくらいに積極的だったので、克哉の意思が決まれば引越しの作業は手早かった。
もともと克哉の生活に最低限必要なものは既に御堂のマンションに運び込んであるので、大きな家具をリサイクルショップに引き取ってもらったり、細々としたものの整理だけで済む。

梅雨にはまだ少し早いが、湿気も雨も増えてきたので早めに作業を終えようと、今日二人は克哉のアパートの最後の荷物の運び出しと掃除をしていた。

「孝典さん、ちょっと休憩しませんか」

克哉が狭いキッチンから冷たいコーヒーを二つ持ってリビングに入ってきた。付き合い始めの頃は中々呼べなかった恋人のファーストネームも、今は自然に呼べるようになっている。

それこそ共に勤めている会社で呼び間違えないように気をつけねばならない程には、克哉の中で浸透している。以前はかなりの恥ずかしさを持って、またはベッドの中で我を忘れたときにしか呼べなかったのが、嘘のようだ。

克哉のCDプレーヤーやイヤフォンなどが雑然と放り込まれていたカゴを整理しダンボールに詰めていた手を止め、御堂は克哉の声に答えて小さなテーブルの近くに腰を下ろした。
ガラスのコップはもうこちらには置いていない為、適当なマグカップに淹れたインスタントのコーヒーを、克哉が御堂の前に差し出した。

「はい、お疲れ様です」
「全くだ。君は意外に物が捨てられない人種らしい」

ちらと先程まで整理していたカゴを目線で指し、御堂は肩を竦めてみせる。それに克哉は苦笑して、苦手なんですよと言いながらカゴを取りに立った。
テーブルの方まで持ってきて、御堂の隣に座って二人で中を覗く。

「何故イヤフォンが二つも三つもあるんだ」
「あー、イヤフォンって何でだかいっぱい買っちゃうんですよね」
「君はiPodを持っているんだから、CDプレーヤーなんてもう使わないだろう」
「現にこっちに置きっ放しでしたしね」

早速小言攻撃を仕掛けてくる御堂を克哉は飄々とかわす。

付き合い始めて一年が経ち、こんなふうに気軽に言葉を交わせるようになった。それが克哉はとても嬉しい。そして、もっともっと親密になりたいとも思う自分を呆れたりも、励ましたりもする。
それは幸福な時間だった。

「ん? これは?」

カゴの中を物色していた御堂は、底から木の箱を取り出した。
縦五センチ横十センチ、高さは六センチ程だろうか。四角い箱の表面は丁寧だがプロの仕事とは言えないような彫刻がなされている。

「ああ、これは…。多分小学校の頃美術か何かで作ったオルゴール箱ですよ」

そう言って御堂の手から箱を受け取ると、克哉はその蓋を開いた。
中には箱の半分くらいの大きさのシリンダータイプのオルゴールが入っていて、隣に小物を入れるスペースがあった。

「卒業制作だったかな…。みんな一人一つずつオルゴール箱を彫刻したんです。指定曲の中から好きな曲選んで。オレは何にしたんだろう。
…―ちょっと記憶が曖昧なんですけど…」

呟きながら、克哉はネジを巻く。

事情があり彼は中学校に上がる前までの記憶があやふやである。
おぼろげなそれらは他人のもののように現実味がなく、自分と途切れることのない直線で結ばれている感覚がない。
それは正しい感覚なのだが、そこのあたりの話を克哉はまだ御堂にしていない。

それは自分でも言葉にする程姿が見えない話であるからで、決して御堂に心を開いていないわけではない。むしろ話せる日を近く迎えられるように、心構えている。春先の件で御堂が自身の過去や弱さ、後悔を隠さず克哉伝えてくれたように。

数回ネジを巻くと、オルゴールは美しい音で曲を奏で始めた。途中からだったが、「さくらさくら」だとわかる。安っぽいつくりでも、オルゴールの優しい音色は心を温かくした。

ネジの巻きが足りなかった為またもや中途半端なところでシリンダーは止まってしまった。

「私はオルゴール箱を彫った記憶は無いな」
「学校によって違いますしね」
「世代が違うと言わないところが君の長所だな」

御堂の自虐的な冗談に二人で笑いあう。

今度は御堂が随分多めにネジを回した。
さっき止まったところから再び曲が始まり、部屋に響き渡る。

「…私の父がオルゴール好きで、実家にはディスク・オルゴールやら自動オルガンやらが置いてあるんだ」
「そうなんですか」
「来るか?」
「へ?」

あまりにも気軽そうに言われたものだから、克哉は一瞬自分の聞き間違いかと思った。

御堂は克哉から顔を逸らそうとでもするかのようにオルゴールから目を離さない。そうすると形のいい耳が真赤になっているさまが丸見えで、逆に御堂の緊張を隠せていないのだが。

「えっと…、それ、は」
「本城の一件で、私は君を永遠に失うのかと思った」

克哉が何かを言う前に、御堂は自分の思いを伝えようと言い募った。
オルゴールはまだ澄んだ音で歌っている。どこか切ないその音が、御堂と克哉の間の空気を渡る。

「恐かった」
「孝典さん…」
「だからというわけでもないが、君を両親に紹介したい。いつか君のご両親にも挨拶したいところだが、今はまずうちの父と母に、私の命の恩人とだけでも伝えたいんだ」

克哉が七年の時間を過ごしたアパートに、オルゴールの旋律は最後の日を惜しむように、流れていた…―。





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