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18禁BLゲーム「鬼畜眼鏡」に溺れる管理人の萌えやSSで構成されたブログです。  ※18歳未満(高校生含む)はお引き取りください。  リンクフリーです。(詳しくは「はじめに」をご覧下さい。)

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【一周年記念】みどかつSS「自鳴琴」③

当ブログの一周年お礼SSの三話目(最終話)です。
第二話

最後の克哉の台詞は、私から皆さんへ向けてのメッセージです。

※御堂さんのご両親が登場しています。
そういうの苦手な方は回避してください。
(拙作の浪漫シリーズ蝶と蜘蛛シリーズの彼らとはまたまた性格が違います)

それでは、感謝の気持ちを込めて。
続きからどうぞ。


「さて、そろそろお夕食にしましょうか」

御堂の母親が両手を叩いて言った。
随分話していたようだ。確かに克哉の体内時計も晩御飯の時間が近いことを示している。

「あ、オレもお手伝いします」
「いいのよ、シェフを呼んであるから」

立ち上がりかけた克哉に優雅に微笑んで、御堂の母親は克哉のごく庶民的な発想からは出てこないだろう台詞を話した。
ハウスクリーニングを使う御堂ですら克哉は納得できない思いだったが、彼の母親はさらに理解できない金銭感覚を持っているようだ。レストランへ行くのではなく、レストランからシェフが来るなんて。

「さ、ダイニングへ移りましょ」

そういって席を立つ御堂の母親に続いて、克哉も立ち上がった。

そのとき何の気なしに視線をめぐらせると、童謡に出てきそうな大きな柱時計が目に入った。
180センチ近くある克哉の肩口を越すほどの高さで、濃い茶色が長い年月を過ごした重厚感を出していた。
だが、振り子が無い。

「ああ、あれが父の一番お気に入りのオルゴールだ、克哉」
「え、あれがですか?」

柱時計に眼を奪われている克哉に気付いた御堂が紹介すると、父親の方が説明を続けた。

「オルゴールは自動演奏楽器の総称で、時計やからくり人形と一緒になっているものもある。あれもそういうもので、ディスクタイプのオルゴールなんだ」
「そうだったんですか…。オレ、初めて見ました」

近くで見てみるといい、という御堂父の言葉に従い、克哉はオルゴールに近づいた。
振子時計で振り子が見える場所に扉がついている。恐らくこの中にディスクが入っているのだろう。
間近で見るとますます木の美しさがわかる。

「綺麗ですね…」
「結構な年代ものでな。大体三百万円くらいした」

思わず手を伸ばしていた克哉の背後から、少ししゃがれた声が聞こえた。

「ひぃっ!」
「そう。妻に知られたらそう言うしかない」

おどけた風に言う見目良い中年は、克哉の恋人の末来の姿そのものだった。



♪♪♪



「思っていたより大したことなかっただろう」

御堂の生家からの帰り道、御堂は自身が運転する車の助手席に向かって話しかけた。
助手席には彼の愛しい年下の恋人が幸せそうな笑顔を浮かべて座っていて、彼の問いかけでその表情を笑顔から苦い顔に変えた。

「いいえ。思ったよりも大したことありました」

わざと作った困った声で克哉は言う。
三百万円もするオルゴール柱時計を妻に内証で買ったり、当然のようにシェフを呼んで食事をしたり、克哉には考えられない贅沢といえた。

だが勿論御堂が言っているのはそういうことだけではなく、恋人としての挨拶をしたことについてもだ。
そちらの方は、確かに拍子抜けしてしまうほどあっさりと受け入れてもらえた。
克哉は今ほっとしていて、上機嫌だ。

そして、御堂も。

「『こんなに早く来るとは思わなかった』と私は言っただろう」
「え?」

運転している為前を真っ直ぐに見ている御堂が、ふと呟くように言った。

「あの夜、君が本城に私たちのことを話したときだ」
「ああ…」

克哉は直ぐに思い当たった。
春先、御堂の友人・本城が克哉と御堂の関係を恥ずかしいものだと罵ってきたとき、克哉は初めて他人の前で二人の関係を語った。
いつもはばれないように、ばれて御堂に迷惑が掛からないように、必要以上に怯えて居た克哉だったが、本城に否定されたときには、堂々と御堂への愛を叫ぶことが出来た。
思い出すと頬が熱くなってしまうのだが、しかしあの言葉たちに嘘は無い。

「『こんなに早く』…。つまり、いつか言わせるつもりだったんだ。少なくとも、両親には。
君が自分にもっと自信を持ち、私への愛を確固たるものとし、他人に誇れるようになる日を、いつか必ず迎えさせるつもりだった。そう自負していた」
「孝典さん…」

左折するのに合わせて車外に顔を向ける御堂の、その耳が赤い。
克哉は胸を熱くしながら御堂の言葉を聞いた。

「それがあんなに、こんなに、早く訪れるとは思っていなかった。嬉しい誤算だ」

口下手な彼が、自身の喜びを小さな声で語ってくれている。
その喜びは克哉がもたらしたものなのだ。
そう思うと克哉も堪らなく嬉しい気持ちになる。

「…これからも、貴方の期待をいい意味で裏切っていきます」

はにかむように克哉が言うと、御堂は「そうしてくれ」とぶっきらぼうに返した。



オルゴールは回転するシリンダーの突起が櫛を弾くことで音を出す。
その突起の位置や大きさ、櫛の硬さなどでその音色は様々に変わっていく。

克哉は思う。

きっと、二人の恋も、巡る季節の中で色々な言葉を交わすことで、二人にしか奏でられないメロディーを紡いでいるのだろう。
あの時の言葉も、今日の言葉も、人生という名の太いシリンダーに植えられるピンとなり、唇から放たれた瞬間、心を打つ響きとなる。
それはときに甘い音であったり、辛い音であったりする。

例えどんな曲になろうと、克哉と御堂は、自分たちの恋を爪弾くことを止めることは無いだろう。

「孝典さん」
「ん?」
「これからもずっと、よろしくお願いします」




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